清想空

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open05.04.12
もう一度会えた翌朝に 前編
膝裏に何かが触れたと思ったときには、正面からの圧力とそれに負けて滑った足のせいで身体が背後へと倒れこんでいた。
予想外の展開に
「うっわっ……」
と間抜けな声を上げた村野光琉<むらのみつる>は、あえなくばふっという派手な音を立てて背中からベッドへと沈んだ。
柔らかい布団がクッションになってくれたおかげで痛みはない。そのことにほっとして、次に自分をここまで追い詰めた相手に文句を言ってやろうとした。
けれど文句を言おうとした口は、光琉を追うようにベッドに乗り上げてきた男、川田慧<かわたけい>によって塞がれた。
「?!」
あまりに衝撃的な展開に光琉の頭と身体がついていかない。
え、なに、なに、これ……っ。
一瞬にして真っ白になった頭の中はまともにものを考えられない。
とにかく目の前の出来事がショッキングで目を回している光琉につけこむように口には川田の舌が侵入し、手がカットソーをまくりあげて直に肌に触れてくる。熱い手に肌をまさぐられて鳥肌が立ち、その感触でようやく光琉は正気を取り戻した。
うわ、うわ、うわっ。
息苦しいし、舌がにゅるにゅると気持ち悪い。自分以外の手で肌をなぞられるのも、ぞわぞわとして落ち着かない。
顔を背けて逃れようとして、けれど体格はさして変わらないのに力は光琉よりずっと強い川田に押さえ込まれていてできなかった。そのうちに身に付けていたデニムパンツのファスナーが下ろされ、川田の手が下着の中に潜り込んでくる。
「んーっ」
嫌だと叫びたくても言葉は全部川田の口の中に吸い込まれた。
だめだと思っているくせに、手は川田のシャツを握り締めるだけで何の役にも立たない。物慣れない自分でもさすがにどうやって逃げればいいのかは知っているのに、身体が思う通りには動いてはくれなくて光琉は息苦しさを募らせた。
ようやく川田の唇が離れたときには軽い酸欠状態で頭がくらりとした。
「かわ、た、……ちょっと、ま……っ」
息が乱れている。手でシャツを握ったまま制止を求めようとして、光琉はぎくりと身を硬くした。
「村野」
川田の目が爛々と輝いている。舌なめずりでもしそうな視線が光琉の身体を舐めるように行き来している。
ひっ……。
怯えを含んだ悲鳴は震える唇からは出なかった。
川田は震える光琉には構わずに手際よく光琉のデニムパンツと下着に手を掛けて一気に引きずり下ろした。
「やめ……」
情けない声を出しても、持ち上げられた足から下着ごとデニムパンツが抜かれる。上半身のカットソーまで脱がされて、力ずくで光琉はうつ伏せにされた。顔がぼふっと音を立てて柔らかい枕に埋まる。
軽く咳き込んだ光琉が身を起こそうとしたときには川田が脚の上に乗っていて、逃げられない状況に追い込まれていた。
なにこれっ。こわい……っ。
素っ裸の後ろ姿を川田の前にさらしているのだと思うだけで、怖くて恥ずかしくてたまらない。ホテルで半裸を見られているが、無防備にさらけ出した全身を視線で嬲られるのはそれの比ではない。
恥ずかしい、今すぐ逃げたい、こわい。
ぐるぐるとそんな言葉だけが光琉の頭の中で空回る。
背後で川田が服を脱ぐ音がする。身体が小さく震えた。
「村野」
「うひゃあ……っ」
耳元で突然呼びかけられて変な声が口から飛び出した。
耳を噛まれて身体がぴくんと動く。それを見た川田が笑いをもらす。
「小動物みたいだ」
川田の指が首の付け根をくすぐると意図せず小さく鼻から息がもれた。熱い手が背中に置かれて背骨の辺りを往復する。その手はすぐに腰へと下りていって腰骨の上を探り、そこからさらに滑りおりて尻をぐっと掴んだ。
その感触に身体がびくりと大きく揺れ、熱い両手で揉むようにされていっそう身体が硬くなった。
そんなところを揉まれたことなんかない。
光琉の身体に強く力が入ったのがわかったのか、突然川田の手が身体の前のものを握りこんだ。
「あっ」
驚いて身体がさらに大きく震えたが川田は気にせず、萎えたままの光琉のものを熱い手でゆっくりとこする。
「あ……ああ……っ」
「腰あげて、村野」
「い、や、だぁ……っ」
そんなこと恥ずかしくてできるか。
首を振って応えると、川田が下腹に腕を回して腰を上げさせた。腿を掴んで膝を開かれて完全に腰を突き出すような体勢をとらされれば、羞恥で死ねる気がした。けれどすぐに川田の手が性器に戻ってきて、光琉の意識をさらっていった。
つい一時間くらい前に光琉の性器に触れていた手には遠慮がない。全体を柔らかくこすっては容赦なく先端の小さな穴を指先で刺激する。そうやって少しずつ快感の芽を植え付けてられて、怖くて、嫌で、逃げ出したいのに光琉の身体は次第に熱を増していった。
「ふ……う、ん」
口からはもらしたくもない掠れた声が出る。敏感な部分を弄られるとどうしようもなかった。光琉は右手で口を覆うようにして、左手でシーツを強く掴んで与えられる刺激に耐えようとした。
「村野」
「ああっ」
川田が光琉の浮きあがった肩甲骨にキスをして、同時に性器の先端の膨らみを強く握った。刺激に背中が浮き上がる。大きく息が乱れて、先走りの雫が穴からとろりと溢れるのがわかった。
「や……ぁ、かわ、た、やめ……」
川田の指が溢れた雫を拭う。恥ずかしいのに、川田の動きに誘われるようにその手に性器をなすりつけようと腰を動かしてしまう。にちゅと音が羞恥を呼び起こした。
嫌だ……恥ずかしい……逃げたい。……でも、気持ち、いい。
川田の手で与えられる気持ちよさに恐怖はどこかへ吹き飛んでしまった。
慣れた手付きでの愛撫はたまらなくて、拭われたそばから新しい雫が浮かび上がる。とめどなく溢れるそれで川田の手をぐっしょり濡らしてしまっているとわかっていても、光琉にはもはやどうしようもなかった。
「あ、……ん、は……ぁ……っ」
気持ちいいことは嫌いじゃない。
人は快楽に弱い。光琉の身体も次々ともたらされる快感に押し流された。
川田の手の動きが早くなるにつれて、身体が熱くなる。与えられる快感に酔うだけになって、はしたないとわかっていながら他に何も考えられなくなった。
口からはこの先にある絶頂を期待して熱い吐息とかすれ声がもれるばかりだ。
「ああ……っ、や……、か、わ……た」
川田は勢いよく光琉の性器を扱き上げたかと思えば急に手の動きを止めてしまう。焦らされてもどかしくて光琉は無自覚に腰を揺らした。
その様子を見た川田は耳元でかわいいと囁いたが、続きをしてくれずにそこから手を離した。脚に体重を乗せまま身体が離れるのがわかった。
思わず光琉は枕から顔を外して川田を振り返った。川田は身を乗り出してベッドサイドのナイトテーブルの引き出しから手のひらサイズのボトルを取り出していた。
「なに、……それ」
「ん? これ? ローションだよ」
「ローション…?」
「そう」
一体何に使うのだろうと考えている間に、川田はとろみのある液体をどろりと手のひらに出した。ボトルをテーブルに戻して再び川田の身体が光琉の上に戻ってくる。
「村野のここに」
言いながら川田の手が光琉の尻を割ってその間に侵入してくる。濡れた指先が窄まりの上をなぞる。ぬるりとした感触にぞわりと悪寒が背筋を駆け上がった。
「こうやって使うんだよ」
「やだ……、い、や……だ、川田……っ」
しつこいくらい窄まりをなぞった指が入口をつつく。何度もそれを繰り返し、ぬるみを足した指が入口の襞を引っ掛けて開いた。そのまま入口の狭さを楽しむように淵をくりくりと刺激する。
気持ちが悪い。痛いわけじゃないけれど、窄まりをこじ開けられているのは気持ち悪い。
大体自分でもそうそう直接触る場所でもない。そこを川田の指で弄られているのだと思うと羞恥といたたまれなさとわずかばかり戻ってきた恐怖に満たされる。