清想空

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open05.04.12
もう一度会えたら、そのときは 第4話
 部屋の重いドアが閉まる音を聞いた川田は一つ息をついて、それから光琉に視線を戻した。
「さて、と。村野も風呂入ってこいよ」
「う、うん」
チェックアウトは十時だからまだ一時間はあると勧められた。昨日酔っ払ったまま寝てしまったので早く綺麗になりたい気持ちはもちろんあるが、光琉はその場から動かなかった。いや、動けなかった。
「ほら、肩、冷えるぞ」
ずり落ちてそのままだった右肩のバスローブを引き上げようとした川田が、ふと下ろした視線を止めた。
「村野? ……もしかして」
川田の視線が上掛けから外れた一点を見つめている。
「勃ってる?」
「……っ」
俯いた光琉の首から上が瞬時に真っ赤に染まった。
さっきアケミとミカの二人にからかわれたせいだ。眼前に迫った胸についつい男としての本能が反応してしまった。ただでさえ朝だから微妙なのに、起きぬけから刺激の強いことばかりがあって身体が煽られてしまった。
男としては仕方のないことだとわかっている。でもそれをかつてのクラスメートに見られるのはいくらなんでも恥ずかしすぎる。せめてもの救いは角度の問題で彼女たちには気付かれなかったことくらいだろう。
「あのっ、川田、後は、一人でできるから……っ」
もう帰っても大丈夫だと、あまりの恥ずかしさに顔を上げられないまま、なんとかそれだけ口にした。本当は上掛けで隠してしまいたいのに、川田が腰かけて押さえているせいでそれもできない。
それよりも何よりも、緩く盛り上がったバスローブの一点を川田に凝視されているのがわかってしまって、いたたまれないというか何というか。
お願いだから、そんなに見るなよ……っ。
とにかく何でもいいから早く一人になりたかった。この際、川田にこの後一人で処理するのか、と突っ込みを入れられたっていい。それくらいなら我慢できる。
そんな心地で身体を縮めるようにして耐えていた光琉だったが、ふいにもたらされた感覚に情けない声を上げてしまった。
「うわぁっ。ちょ……ちょっ、川田?!」
川田がきゅっとバスローブ越しに勃ち上がりかけたものを握ったのだ。あまりに突然のことに光琉は慌ててその手を剥がそうとしたが、力ではやはり川田には叶わない。手は光琉のそこから離れることはなく、むしろ包み込むように触れられる。
「何して……っ」
「……俺がしてやろうか」
「はっ……?」
一体何の冗談だと、咄嗟に顔を上げたときにはもう遅かった。ベッドの端に腰かけていた川田は、性器に触れた手はそのままベッドへと上がって光琉の背後へと移動した。そうして光琉の足を移動させて、川田の足の間に光琉の細い身体を納めてしまった。
抵抗するタイミングを失った光琉の隙をつくように、空いた方の腕を腰へと回してくる。すぐにするりと柔らかい感触がして、バスローブをとめていた紐を解かれた。
「川田……っ」
川田の手がバスローブを緩めて直接胸に当てられる。その手はすぐに肌をなぞるように下りていき、下腹を撫で回した。
「……っ」
熱い手に触られて光琉の腰がわなないた。肌に触られると鳥肌が立つようなぞわりとした感覚が広がって抵抗する力を奪っていく。川田の手が意図を持って肌に触れるたびにぴくぴくと肌が震える。その様子を見た川田が小さく笑った。
人に肌を直接触られるのがあまりに久しぶり過ぎて、肌が過敏になっている。そのせいで、川田の手指の動きを余計に感じてしまうような気がした。
「あ……っ」
性器に触れていただけの手がバスローブの中にもぐり込んで、光琉の性器を直に強く握った。川田の手で肌に触れられただけなのに、それはさっきよりも固くなって上を向いていた。
その敏感すぎる反応を川田にからかわれているのだと思うと、もうどうしようもない。
川田は性器を揉んでは擦るような動きを始めて光琉を翻弄する。同じ男であるだけあって川田の手の動きに迷いはなく、着実に快感を呼び起こしていく。
「ん……、ん……っ、……かわ、た、……も、やめろって……っ」
「いいから、おとなしく感じてろって」
首を振っても、性器をいじくる手を止めようとその上に手を重ねても、川田は動きを止めたりはしなかった。乱暴ではないけれど、確実に高みへと登らせていく手付きに光琉は追い詰められていく。
こんなのは嫌だと思うのに、身体はその気持ちを裏切って高ぶっていく。息が切れて身体の力が抜ける。
どうしようもなく気持ちがよかった。
も、いやだ……っ。
先端からとぷりと雫がこぼれ落ちた。一度もれてしまえば、後から後から押されるように精液が出てきて、あっという間に性器全体が濡れた。それが余計に川田の手の動きをよくして、ついでに光琉の快感をよりいっそう高めてしまう。
「あ、あ、ん、んん……っ」
声がひっきりなしに出る。
久々の強烈な快感に身体が暴走を始めてしまう。光琉の気持ちを置いて身体が勝手に走り出した。止めたいのに、もう光琉自身にも止め方がわからない。
「村野、足、開いて」
のってきた光琉に気が付いた川田が命令する。もっと気持ちよくしてやるからと耳元で囁かれ、その呼気が耳の付け根に当たってぞわりと鳥肌が立った。
「んっ。……そんなの」
恥ずかしすぎる命令に光琉は再び顔が赤くなるのを感じた。そんなことできるはずがない。
快感と恥ずかしさにじんわりと涙が膜を張るのに川田は許してくれず、光琉がやらないのならばとばかりにさっさと自分でバスローブの裾を思い切り割り開いてしまう。
すでに緩められていたバスローブがさらにはだけられて、身体の前面が完全に露出するような格好にされてしまう。室内とはいえ少しひんやりとしている部屋の空気に触れた肌が寒いと感じたのは一瞬で、強引に足を開かせられてその恥ずかしさで体温が上昇した。
川田の足を跨ぐようにさせられ、膝が閉じられなくなった。強引に開かされたせいで踵に力が入らない。足をうまく持ち上げられない体勢に持ち込まれてしまい、どうしようもなくなった。
何もかもが丸見えの格好に光琉は泣きそうになった。
「も、や……っ」
目をぎゅっと瞑ってゆるゆると頭を振る。それを見た川田がまた笑って首に口付ける。その感触にも感じてしまって、光琉はひくりと喉をひきつらせた。
「村野、かわいいな」
「……っ」
川田はさっき自分で被せたバスローブを肩から引きずり下ろした。あらわになった背中に音を立ててキスをされて、光琉は声にならない息をもらした。舌でぺろりと舐められてその感触にも肌が粟立つ。
背中でも感じるなんて、初めて知った。
「ふぁっ……ふ、……ん……っ」
「肌も白くて、綺麗だな」
「いや……あ……んんう……っ」
綺麗だと褒められても、女の子じゃあるまいし嬉しくなんかない。
そう思うもののそんな文句を言う余裕もない。
左手で激しく性器を擦られながら背中を川田の唇で責められて、空いた右手で腿を撫でられて、正気を保てなかった。性器は零した蜜でぐしょぐしょでもう限界に近かった。
すべての快感がそこに集中しすぎて辛い。久しぶりの快感はいいと言うよりもむしろきつかった。
早すぎだと笑われるかもしれないという恐れすら頭には浮かばず、早く楽になってしまいたいという気持ちでいっぱいになる。
「あっ、んっ、もう……だ、め……っ」
「いいぜ、イけよ」
耳元でそそのかされてその声の甘さに背中を震わせた。それと同時に先端の膨らみを強く握られて、光琉は堪えようもなく促されるまま放出した。
「あっ……んーっ。……ああ」
頭の中が真っ白になるような快感の後に訪れるのは馴染みのある倦怠感だ。
小刻みに震える身体には力が入らなくて、脱力感もあって光琉は背後の川田にぐったりと寄りかかった。恥ずかしさで一杯なのだが動けないのだから仕方ない。
「はあ……は……」
「けっこう出たな、久しぶりだったのか」
問われて光琉はぐっと詰まった。
頼むからそんなことは聞かないでほしい。
そう思いながら背後に視線をやると満足そうな、あの人懐っこい顔をした川田がそこにはいた。
「お前、ほんとかわいい」
汚れた手をベッドヘッドに置いてあったティッシュで拭った川田は力が抜けた光琉の足を元に戻すと、後ろから光琉を前へと押し出す。光琉はその力に逆らわず、少しずつベッドの端へと押し出されながら移動した。
「まだ三十分以上あるから、シャワー浴びてこいよ」
「うん……」
「そんで、チェックアウトしたら、続きするぞ」
「…………え?」
咄嗟に何を言われたのか理解できなかった。
床へ足がつくところまで来て、川田は後ろから自分の腰をぐいっと押し付けてきた。何か固いものが光琉の腰に当たっている。
……まさか。
ぎくりとして、身体を強張らせた光琉に気が付いたはずなのに、川田はそのことには触れなかった。
「とにかく、シャワー行ってこい」
「う、うん……。って……わわっ」
川田は強引に光琉を立たせると無理矢理バスルームへと連れて行った。そうして中へと光琉を押し込むと、捨て台詞のようにドアを閉めながら信じられない言葉を吐き出したのだ。
「終わったら、お前のこと抱くから」
「はっ……?! ちょ、川田?!」
慌てて抗議しようとしたところで遅かった。無情にもバスルームのドアは閉まり、光琉に反論の機会は与えられなかった。
なんでこんなことになってしまったのか。今更考えたところでどうにもならない。
え……、な、に、この展開ーっ。
この日、光琉はホテルのバスルームで、これまでの人生で一番大きな悲鳴を上げた。
それを聞いた川田が外で笑っていることも知らずに。