清想空

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open05.04.12
もう一度会えたら、その後に 第18話
 ウォッシュタオルの柔らかい生地が尻の合間のすぼまりを何度も擦っていく。何度かそれを繰り返した後、今度はピンポイントでそこだけをくりくりと刺激される。
「あっ」
しっかりとした指先の感触に身体が逃げようとしても、壁際に追い込まれた身体は簡単に川田に捕まえられてしまう。
そのまま指を押し付けられるとウォッシュタオルごと中に入ってきそうで怖かった

「やっ、いやだっ」
「大丈夫。ひどいことはしない」
咄嗟に出た言葉にも川田は怒らなかった。宥めるように泡を避けて項に口付けてくる。
「……っ」
敏感になっている肌が刺激で粟立ち、ぞくぞくとした震えが止まらなくなる。
一度離れた川田の指が今度は直にすぼまりに触れてくる。ぬるりとしているのは指先に足したボディーソープだろう。ぬるぬると周りに塗り付けてからぐっと中に入ってくる。
「やっ」
ほんの爪の先だけとわかっていても、普段外から開かれることのない場所はその進入を拒んできつく締まる。何度か出して入れてを繰り返した川田に力を抜くよう言われても、立っているせいもあってそこを緩めることができなかった。
「も、無理だって」
「なに言ってんの。前は俺の、ちゃんと受け入れられただろ」
「でも」
「いいから、ほら」
「あっ」
甘い声で囁かれながら前のものを握られる。川田から与えられた刺激でわずかに反応していたそれは、直に触れられて正直に喜んだ。
なんか、自分の身体に裏切られた気分だ……。
欲望に忠実な自分の男の部分を恨めしく思っても、泡と一緒に滑らかに擦られるとどうしたって気持ちが良い。一人で立っていられなくなって、光琉は目の前にある壁にもたれかかった。
「ふっ、……んっ」
気持ちの良い感覚に引きずられているうちに後ろに指を含まされ、ずるりと第二関節まで入ってきた指が中で曲げられた。
何度体験しても気持ちが悪い。
身体の中を探られるのは強烈な異物感との闘いだ。どうしても身体が強張って、ただでさえ余裕がないのにさらに指を締め付けてしまう。
「ん、きつ」
「あ、あ、あっ」
うっとりした掠れた声で呟かれて、一気に羞恥が込み上げる。壁にもたれているおかげでその顔を見られないことだけが救いだ。
川田はきついと言いながらも躊躇せずに差し込んだ指を抜き差しして折り曲げる。その間も前は刺激されていて、同時に与えられる気持ちの良い感覚と何とも言えない摩擦感に耐える羽目になる。
けれどすぐに前立腺のしこりを見付けだされて、光琉はその強烈な感覚に自分でも驚くような声を上げてしまった。
「見っけ」
「うっ、……あっ」
そこを何度も何度も刺激されてびくびくと身体が勝手にはねる。壁にもたれていても立っていることが辛い。
前も後ろも強く刺激されるとどうしようもなかった。指が二本に増えて圧迫感が酷くなっても苦痛に似た強烈な快感は去らず、しつこく内側を刺激されるせいで恥ずかしい声が止まらなくなる。
「ああっ、あっ、いや、あああああっ……ん、ん、んんっ」
「村野、いくら防音がしっかりしてても、さすがに風呂場でそれはまずい」
面白そうに、けれどわずかに焦ったように言った川田に、閉じられなくなった口を手の平で塞がれた。
そう言うくらいなら指を抜けよ。誰のせいだと思ってるんだ……。
口を塞がれて息苦しかった。自分の吐いた熱い息が外に逃げないせいで、余計に苦しく感じる。
「か、わた、苦し……い」
「もうちょっとだけ我慢して」
「んんうっ」
一度抜けた指がさらに数を増やしてまた入ってきた。その質量を拒むように入口が抵抗したけれど、縁を繰り返しなぞられながらゆっくりと広げられると次第にその大きさに慣れてくる。
圧迫感はさらに酷くなっているのに痛みはなくて、じわじわと指を飲み込んでいく。
川田はじりじりと奥へ進む途中で前立腺を擦ることも忘れず、抜き差しを繰り返して指が付け根近くまで入るようになった頃には光琉の脚はみっともないくらいに震えてしまっていた。
壁に縋り付いてなんとか立っていたものの、前からは粘液が零れ出していてもう限界が近い。
「はっ、ふぅ……」
「よくできました」
ようやく口から手を外される。喘ぐうちに口から溢れたのか、その手が唾液で汚れていて、糸を引いていた。少しだけ申し訳なく思いつつ、呼吸が楽になってほっとした。
指が後ろからゆっくりと引き抜かれる。ぬちゃ、と粘着質な音をさせて完全に抜けると震える脚では身体を支えきれず、光琉は壁を伝うようにして床にへたり込んでしまった。
「うーん、いい眺め」
「……うるさい」
何をふざけたことを言っているのかと振り返れば、川田は床に膝をついて壁に上半身を預けた状態で息を整えている光琉をじっと見ていた。
今の自分の姿を『いい眺め』と言われたのだと気が付いて咄嗟に睨みつけたけれど、赤くなった顔と与えられた刺激に濡れた目では効果はなかったに違いない。
川田は気に止めた様子もなくシャワーのコックをひねった。
まだ動けない光琉にそのままでいいからと言って、へたり込んだままの身体についている泡を流してくれる。ぬるめに調節された湯が肌に心地良かった。
「ふー」
人心地がついて湯を浴びていると、川田が光琉の頭にかからないようにシャワーを低い位置にあるホルダーに掛けた。
これでひとまずは終わりだとほっとしたのも束の間、光琉が立ち上がろうとするより早く、片膝をついた川田が背後から再びすぼまりに触れてきた。試すように軽く指を入れてすぐに抜く。
「まだ柔らかい」
「!」
脳みそが沸騰するかと思った。
どうにも言い返せないでいるうちに川田の手でぐっと尻が割られる。
「これなら大丈夫だな」
「川田、なに」
光琉は急いで川田の手から逃れて振り返り、目の前の光景に首を傾げた。
川田の手には先端に半透明のチューブがついている大型の注射器のようなものがあり、側に液体の入った洗面器が置かれていた。
……一体何をするつもりなんだ?
「え、と、川田。それは……」
「ん? 腸内洗浄の道具」
「ちょう……」
想像外の言葉にぴしりと身体が強張った。
「綺麗にしてやるって言ったからさ。ちゃんと道具も買ったし、村野のここも今ならいけそうだし」
「…………腸内洗浄って……なに、かな」
聞くのが怖い。が、確かめずにはいられなかった。
「ものすごく簡単に言うと、水を入れて出して腸の中を綺麗にすること」
「……」
なんでもないことのように言われたけれど、ものすごくおかしなことを言われた気がする。
水を入れるって、どこに……?
わかっているはずなのについ反芻して、悶えそうになった。改めて考えるまでもない。光琉の腹の中に入れるに決まっている。
……ない、ない、ない。それはない!
絶対に無理だと思っているうちに腕を引かれ、川田の下に仰向けに転がされた。
「わっ」
片手で肩を押さえられ、もう片方の手で脚を割ってその間に川田の腰を入れられると完全に逃げられなくなった。
「待て、待って、待ってっ」
「大丈夫だって。水もすんごく温い生理食塩水にしてあるし、やり方もちゃんと確認してあるから」
「そういう問題じゃない!」
叫んでも川田は気にせず、チューブの先端を側に寄せた洗面器の中の湯に浸した。
吸い上げられた湯が半透明の管の中を上がって太い管の部分に溜まっていく。川田は二センチメートルほど溜まったところでチューブを水面から離し、注射器を床に置いた。
「川田、いやだ……っ」
「まあまあそう言わずにさ。よっ、と」
肩を押しやろうと伸ばした腕はあっさりと捕まえられる。川田は光琉の右膝の裏を掴んで脚を肩に担ぐと、浮き上がった腰をそのまま床についた自分の脚の上に乗せた。当然、尻の間を上にさらけ出す形になり、その反動で上半身は床から離せない体勢にさせられる。
「あ、や、やだ……っ」
川田の指がすぼまりを撫でたかと思うとぐっと開かれ、そこにチューブの先端のやや丸く太くなっている部分を押し付けられた。つぷ、と先端が内側に入ってくるのがわかる。
「ひっ、……あっ」
さらにくっと押されて続きが入ってくる。
「いやだっ、やだっ、やだっ、やめろって」
「大丈夫、これ以上は入れない」
身体が自然と侵入物を排除しようとするのに、先端の太くなっている部分が引っ掛かって押し出すことができない。勝手に抜けないことを確認した川田が床に置いていた注射器を手に取った。
一気に恐怖感が膨らむ。
「や……っ」
川田の前で排泄を強制されるのだと思うと、羞恥と生理的な嫌悪感が這い上ってくる。
嫌だ。絶対、嫌だっ。
光琉はわずかな湯が中に入ってきた感覚に恐慌をきたした。
「――っ」
声になりきらない叫び声をあげて、光琉は無意識のうちに手脚をめちゃくちゃに動かしていた。
「つっ、村野?」
手か脚が――たぶん脚だと思う――まともにぶつかったらしく、川田が驚いたように声を上げて手を止めた。
「やだっ、いやだって……!」
泣きたくなどないのに涙がどっとわいてきて、一気に頬へと溢れ出す。どうしてもこらえることができなかった。
「いやだっ、て、言ってる、のにっ」
泣き顔など見せたくなくて腕で目の上を覆っても、嗚咽を止めることはできない。涙も同じで、次から次へと流れていく。
「ぜ、んぜん、優しくないっ、ばかっ」
それだけ言って、後はどうにも思いを言葉にすることができくて、唸るような声を零すことしかできなかった。
まるで子供だ。
そう思っても川田の行動を受け入れることはどうしてもできなくて、光琉は馬鹿みたいだと思いながら呼吸が落ち着くのを待つしかなかった。
「村野」
川田が顔を覆っていた光琉の腕をそっと持ち上げた。涙でぐしょ濡れになっていた腕が外されると空気が当たって顔がひんやりとする。
「ごめん」
こぼれ落ちる涙を川田の唇が吸い取った。その仕種が優しくて、瞬きをするとさらにぼろぼろと涙が流れた。その跡を撫でるようにキスが追っていく。
「ごめん」
最後に目元にキスをして川田の顔が離れていく。川田に取られた手にはいつの間にか川田の指が絡められていて、慰めるように光琉の手を包んでいる。
「ばかっ、この、ばかっ」
「うん、ごめん」
ようやく整ってきた息で川田をなじる。
川田は大人しく頷いて、光琉の中に埋められていたものをゆっくりと引き抜いた。それと一緒に湯が出ていく感触に、光琉は目を閉じてなんとかこらえる。
「もう使わない。使わないから、さっきボディーソープつけたとこだけ洗わせて」
「ん」
宥めるような声に光琉は小さく頷いた。