清想空

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open05.04.12
その瞳に映る人 第4話
それでも、潤滑剤の助けもなければスキンの滑りもない状態では、そこから先をするりと飲み込むことはできない。
「う、う……うっ」
身体の内側の粘膜が乾いて引き攣れるような感覚に二科の口から苦しげな声が漏れても、ここでも落は容赦してくれなかった。
「いああ! ……ん、はぁ、は……やめ、やめ、て」
小刻みに二科の身体を揺らして、強引に奥まで捩込む。
強烈な摩擦感といつもより近く感じる熱に、快感とは違う震えが二科を襲った。気持ちが悪いような、脂汗が浮いてくるような感触に、二科の瞳に薄い膜が張る。
き、つい。なんだ、これ。
落を受け入れた場所は潤いを持たないまま、みっしりと中を埋められている。少しでも動かれようものなら悲鳴が出そうだ。
「やっぱいいな」
冷静に見ればどきりとしてしまうような色っぽい表情を浮かべている落の顔も、もうまともに理解できない。何を言いたいのかも勿論わかるはずがなく、二科は濡れた視線を向けた。
「あんたの苦しそうな顔。見てるとぞくぞくする」
「……このサディストがっ」
「またこの目が」
言って顔に手をかけられる。落の顔がよりいっそう近付いて、口付けを落とされるかと思いきや、肩に噛み付かれる。
「……っ」
「こんな状態でまだ反抗的なのに、濡れてるのがいい」
「うっ――!」
さらに顔を下げた落が乳首を思い切り噛んだ。
ちぎられるんじゃないかという痛みに二科の身体が硬直し、思い切り中の落を締め付ける。ただでさえぎちぎちのそこを締めているのだから、落も痛みを感じているはずだ。それなのに、それには構わず身体を倒した状態で奥を突いてくる。
いつもならそんなことをされればすぐにでも射精してしまう場所だったが、乾いたままのそこを突かれてもまだ痛い。中が破れるんじゃないかと恐怖すら覚える。
「はあ、はあ、いたい、いた、やぁ」
「もう少し我慢しろ」
それでも容赦ない落に、二科は浅く息を吐きながらぐいぐいと圧迫されるのに堪えた。そのうちに、次第に落の動きが滑らかになり、引き攣れる感覚がなくなっていく。それが、落の漏らすもののせいだと気付いて、二科は頭の中まで真っ赤になった。
「ひ、やあああ、やだあ」
体験したことのないぬるぬるとした感触に腕が勝手に暴れて、既に赤く擦れている部分にネクタイが食い込んだ。
痛いのに、突かれている中が強烈な感覚を運んできて、自分の身体なのにどうなっているのかもわからない。
「う、も、だめっ……うーっ」
「しようがねえな」
思うようにならない自分に二科が苛立ったのがわかったのか、文句を言いつつも落がネクタイを解いてくれる。赤くなってるな、と舌でその部位を慰められれば、またぞくりと背筋を快感が走る。
すっかり落という男に翻弄されている。
そんな自分に腹を立てたいが、けれどここまできてしまえばもはや抗いようもなく、二科は自由になった細い腕を落の背に回した。
「ひぃっ、や、や、やああっ」
それを合図に落がずるりと濡れたものをゆっくりと抜いていく。まだ濡れていない部分を連れていくように擦られて、二科は自分の想像以上の声を上げてしまった。
悲鳴としか言いようのないそれは、落が完全には性器を抜かずに再び押し入ってきたことで、とめどなく口から零れていった。
「いやっ、いやぁっ、やだあぁ、やだってぇ……やめて……」
「すごい、声だ、な」
「はあ、んっ、ん、やめて、やだあっ」
こんな自分は知らない。こんな感覚は知らない。
初めての感覚に二科の涙腺は壊れた。
泣きたいと思ってるわけではないのに、落に揺さぶられるたびに涙が溢れ出る。同時に、もうまともな言葉も話せなくなって、いやだ、やめて、と繰り返すだけになる。そんな二科の様子に落がいやらしく囁く。
「あんた、子供みたいになってる」
そんなことは分かってる。けれど、他の言葉が口から出てこないのだから仕方がない。
分かり切っていることをわざわざ伝えて二科の羞恥心を煽る男を、本当は睨み付けたいのに泣いている瞳では効果はない。
「もう、やあ」
「そう言うなって」
「んー!」
これ以上は嫌だと訴えても落は取り合わない。むしろそんな二科の仕草や表情に刺激されるのか、動きが激しくなり、二科の中全体が落の先走りで濡れて、その動きを滑らかにさせていく。
「やっ……ぬるぬる、する」
「それがいいんだろ」
「よく、ない……」
「どこが」
嫌がる二科を笑って、落は今度こそ二科の中から全てを抜いた。生まれた空洞を埋めてほしいと、いつもの癖のように腰を揺らめかせてしまい、消え入りたいほどの恥ずかしさに見舞われる。
落はそんな二科の様子をしてやったりという表情で眺めている。
「あんただって欲しがってる」
「……見るな」
「見られて感じるくせに」
「! 感じてないっ」
「どうだかな」
「あっ、あっ、あっ、……んーっ、んーっ」
あからさまに揶揄した落は強がる二科を押さえ付けて、膨れ上がった性器を激しく抜き差しする。
人のことをどうこう言いつつ、自分だって性器をこんなにして感じてるんじゃないかと思ったが最後、二科は腰から背筋に突き抜ける痺れに何も考えられなくなった。
「や、や、や、……ああっ、やだ、へん……なあ、あ、変な感じ、が、するっ」
「気持ちいい、だろ?」
「や、よく、ないっ」
ぬるぬるとするもので前立腺の辺りを擦られると、いつもと感じが違ってじれったくなる。もっと強く押してほしいのに、滑って全然強くしてもらえない。もどかしさに、いやいやと首を振れば、その代わりと言わんばかりに擦られるスピードと突かれる深さが増して、二科はその感覚に堪えようとぎゅっと目を閉じた。
なのに目を閉じれば余計に感覚が増して、ぬちゅぬちゅという音を立てて落の性器が出入りするたびに瞼の裏に光が飛ぶ。もう虚勢を張ることすらできない。
「んあぁ、もう……だめ……」
意図せず、口から誘うような声色が零れた。二科の中がぬるぬるのぐちゅぐちゅになっていて、入れたことなど一度もないがまるで女の膣のように柔らかに男のものを受け入れているのがわかった。
同時に、過去に一度だけ抱いた秀一の中に入ったときの感覚が思い出される。あの時の二科が感じた快楽を、落のような男に自分の身体が与えていると思うだけでセックスに溺れる二科の身体は燃え上がった。何をされても快感に変換されてしまう。
もっと突いてほしいと言わんばかりに腰が浮き上がり、落の背に回した腕にも力が入る。
「あんっ」
落が驚いたような顔をしたけれど、すぐに二科の要求に応えるように一際強く突き上げた。
それにびくりと反応して、二科の性器からとろりと液が零れ落ちた。一度零れてしまえば堪えられなくなり、どんどんと溢れてくる。そんな二科の淫らな反応に、落の口からも感嘆の息が漏れた。
「すごいな」
「あっ……う、ん」
触れてもいないのに勃ちきった性器からとめどなく滴るものが垂れて、落を受け入れている場所に溜まる。それがまた落の動きを滑らかにし、二科の快感をも煽っていく。
「はあ、ああ、いいっ……おね、が、い……」
完全に快楽の虜となった二科からは、もっととせがむ言葉が紡ぎ出される。腰も落に呼応するように動いて、絶頂に向けて走り出す。
「もっと、奥、突いてっ……いかせて……っ」
細い脚が早くと急かさんばかりに落の腰を挟み込んで擦り付ける。
「はっ……」
「あ、ん……早くっ」
慣れた仕草に笑うような声を漏らした落が奥を集中的に突いて、二科を責め始めるともう止まらない。
二科の口からは淫らな息と声が出るだけになり、落を銜えた箇所が引っ切り無しに収縮して中にいる落を締め付ける。それが落だけでなく、二科の性感をも高めて、もう乱れきるしかない。
「あっ、あっ、ああっ、いい、いいっ……う、んぅ……はあっ、あんっ、……も、いきたいっ……お前も、もう、いけよ……っ」
堪えられないようにねだる二科を、もはや落も笑い飛ばさない。同じように落にももう絶頂が見えているのだろう。
だからこそ早くと腰を蠢かせて、誘う声音を出してしまうのは仕方がなかった。早く、いつものように、男のもので射精に導かれたかった。
「あんっ、あんっ、早く……いって、いってっ」
「あと少し……我慢しろ」
身も蓋もなくせっつく二科に舌打ちをした落をわざと締め付けてやると、苦しそうな顔をして動きを止めてしまう。
「やあっ、止めないでっ、突い、て!」
「だったらちょっと、大人しくしとけってっ」
「あああっ」
強く言って、落ががんがんと性器を突き込んできた。落の腰が二科の尻にぶつかって音が鳴る。同時に落の濡れた性器が二科の奥を強く突いてきて、頭の中のメーターが振り切れた。
「いくぞ」
「ああんっ、あ、んっ」
低い声で落が耳元に囁いてくる。ずんっと深い抜き差しを繰り返されて二科の身体が痙攣を起こした。
「くっ……ん、は……」
「ああっ、は、ああんっ、ひっ……ア――!」
腰の奥に熱いものが飛び掛った。
二科はその慣れない感触に悲鳴を上げて、どくどくとまだ吐き出している落の性器をこれ以上ないほどに締め付けながら仰け反る。びくびくと身体を震わせながら、二科の手が落の背中に爪を立てた。
いつもより長く続く絶頂感に、震えがいつまでも止まらない。頭の中が真っ白になったままの状態で身体の力がすとんと抜けてしまい、くたりと腕がベッドへと落ちた。
「おい、大丈夫か」
落の声が近くに聞こえたが、二科は弱々しく首を振ることしかできない。
少ししてようやく震えの止まった二科が目を開くと、目の端から涙がぼろりと落ちていった。それにようやく、自分が激しく泣いていたことに気付いて呆然とする。
あ、なんだ、これ。
自分に何が起きたのかもわからない。こんな状態になったのは始めてだった。
「今の、なに……」
「自分でもわかってなかったのか」
人の悪い笑みを浮かべた落が二科の脚を胸に付かんばかりに抱え上げたまま、中に収めていたものを抜いた。